NPS事例 – Apple

NPS(ネット・プロモーター・スコア)を活用して事業成長を実現した事例を紹介します。Apple(アップル)は、全世界共通の顧客ロイヤルティ指標としてNPSをパイオニア的に導入。持続的な業績向上達成を遂げているだけでなく、従業員(eNPS)と顧客の双方からNPSを高めることにも成功しています。


お客様の声を聴くパイオニア

Steve Jobs(スティーブ・ジョブス)はその圧倒的な存在力と牽引力から、時として「お客様の声を聴かない、自分の信念だけを信じる経営者」として揶揄されることがあります。

しかし、それは違います。

「お客様の声を聴く」ということにおいて、アップルほど真剣に取り組んできたグローバル企業は他に類を見ないといえるでしょう。現に、同社は科学的に「顧客の声を聴き、分析する」ことに先進的に取り組み、その声を業務に反映させるため全社員を巻き込み日々屈力してきました。

そのアップルが指標として活用しているのがNPSであり、全社員をあげて取り組んでいるからこそ、「NPSでの事業成功例と言えばアップル」と言われるまでの地位を保持できるのです。

その業績成功は、

財務的結果:月商6,000ドル/1平方フィート当たり
小売店平均:月商1200ドル/1平方フィート当たり

全店NPS®平均: 72 2011年)
ベスト店NPS®: 90 (2011年)

と、輝かしいものです。

それでは、NPS導入においてパイオニア企業でもあるアップルは、いかにNPSを活用しているのでしょうか。


業務の中心にNPS

アップルがいかにNPSを活用しているか。
それは、店舗の毎日の朝礼の様子からも伺うことができます。ここでは、アメリカのある店舗で実際に行われていた朝礼の様子を基にご紹介します。

毎朝の朝礼には技術者、販売員、在庫管理者、レジ担当者、マネージャーなどお店に関わる全てのスタッフ、社員が集合します。

店長が朝会で共有することは2つだけ:
NPS推奨者からの声:ある従業員に寄せられた推奨者からのお礼のコメント、店舗での体験を具体的に紹介(従業員名も読み上げます)。全メンバーがその従業員に拍手を送り、一気に場のモチベーションがアップします。
NPS批判者からの声:ある従業員に寄せられた批判者からのクレームを紹介(ここでは従業員名は伏せられます)。顧客がいかに、そして何故不快な思いをしたのかを具体的に説明します。チームには一気に緊張感が漂います。

これが、アップルの日課です。

続いて、店長は2つのことを徹底しています。
全てのNPS批判者にフォローの電話入れる
・批判者へのフォローは全て24時間以内

そして、この徹底ぶりは確実な結果へと繋がっています。
なんと、フォローのあった批判者は他の顧客よりも多くのアップル製品を購入しています。具体的な数字で見ると、他の顧客より約$1,000(11万円)多い購買額であり、年にして言うと$25 million26億円)相当の追加売上に換算されます。

顧客体験の価値向上がいかにロイヤルティ向上につながり、業績向上を生むか。
その良い事例としてこのアップルの例があるのではないでしょうか。

しかし、なぜここまで徹底できるのでしょうか。


ミッションに裏打ちされる顧客&従業員ロイヤルティ向上への努力

アップルのミッションは、「Enrich the lives of customers and employees(顧客と従業員の生活を豊かにする)」です。

同社本部にはNPS本部が存在し、全ての店舗に寄せられる顧客フィードバックを日々分析しています。NPSの店舗ごとの順位、状況、顧客からのNPSフィードバックは日々更新されており、従業員は常にダウンロード可能となっています。推奨者がなぜ推奨するのか、批判者がなぜ推奨しないのかを科学的に分析し、確実な業務改善に取り組める基盤を構築しています。

各店舗のKPIは四半期ごとのNPS向上です。
全店舗がNPS向上を1つのKPIとして競い合う仕組みがあり、だからこそ、来店するお客様全員に全メンバーが神経を研ぎ澄ますことが出来るようになるそうです。

つまり、アップルにとって、「お客様の声を聴く」という行為は、毎日行うべき当たり前の行為です。そして、NPSが共通言語・指標として活用されています。

また、アップルは従業員ロイヤルティ向上の指標にNPSを活用したパイオニアでもあり、そのミッションに裏打ちされるように、従業員ロイヤルティ向上にも両輪的に取り組んでいます。

NPSの活用に先進的だったアップルは早くから、顧客の推奨者を増やすには、従業員自身が自社の推奨者でなければならないことに気づいていました。だからこそ、NPSのフレームワークを活用した従業員サーベイ(弊サイトでeNPSとして紹介)を毎4カ月ごとに実施。従業員のロイヤルティ向上へのアプローチも並行的に行っています。


アップルのゴール

“[M]aking money is the result, not the goal of the organization. The bottom line of its business is to delight the customer.”「お金を稼ぐことは結果であり、組織のゴールではない。ビジネスの根底にあるのは、お客様を喜ばせることです。」

NPSを活用した事業成長として飛躍的な結果を保持するアップルですが、業績向上がアップルのゴールではないと、同社は述べます。

“Delight the customers” 「お客さまに喜んでもらうこと」

このゴールに向かって懸命に走るからこそ、真のロイヤルティ向上を顧客と従業の両輪から取り組み、業績向上へとつなげることができるのではないでしょうか。
アップル社の取組は、こういった意味で「NPSを活用した事業成長」の素晴らしい事例の1つと言えるでしょう。

<参考資料>
http://blog.satmetrix.com/the-secret-of-apples-success-nps-as-a-measure-of-customer-delight
https://hbr.org/2011/08/apple-stores-in-china-the-one
http://www.forbes.com/sites/stevedenning/2011/08/26/another-myth-bites-the-dust-how-apple-listens-to-its-customers/
http://www.forbes.com/sites/drewhansen/2013/12/19/myth-busted-steve-jobs-did-listen-to-customers/
http://www.etuma.com/blog/apple-watch-nps